こんにちは、梅雨特有の湿気と気象でぐったりのkurokoです
AIにまけない分野のひとつとして『日本の伝統芸能』に焦点をあて、自分の好きなものや気になったことを皆さんに共有していくシリーズ、 第二回は「落語×AI」に関するお話です。
落語とは?
落語(らくご)は、一人の演者(噺家-はなしか-または落語家と呼びます)が座布団の上に座り、扇子と手拭いなど最小限の小道具を用いて身振り手振りの所作を交えながら話を展開するという形式の伝統芸能です。
1500年代の室町時代末期~安土桃山時代、寺院や神社で説教や物語を語る僧侶や修験者が庶民に対して娯楽として話を聞かせる風習が生まれました。
その後、江戸時代に町人文化の中で発展したものが現在の落語の原型となります。
落語×AIの現状
生成AIが進化し続ける昨今、落語界でもAIについて着目されている方がいらっしゃいましたので、今回はそちらをご紹介いたします。
昨年、落語家の桂文珍さんが自身の独演会PR会見にて、「LGBTQ」についてのテーマを扱った新作落語のシナリオをChatGPTに書かせたところ「面白くなかった」と言及されていました
結論として、まだ生成AIによる落語が人間の笑いを誘うことは難しいようです。
なぜ面白くなかったのか考察してみた
どうして面白くないものが生成されてしまったのか、私なりに原因として考えられる要因を2つ挙げてみます。
【其の一】テーマが取り扱いの難しいセンシティブな内容だった(AIのフィルタリングとのミスマッチ)
AIがシナリオなど何かを生成する際には、いくつかのフィルターや制限が設けられることが一般的です。
以下に、AIのシナリオ生成時に考慮される主な制限事項を挙げます。
1. 性的表現の制限
AIは、成人向けのコンテンツや性的な表現を含まないように設計されています。
これは多くのAIプラットフォームが、未成年者が利用する可能性があるため、性的表現を排除するポリシーに従っているからです。
2. 暴力表現の制限
シナリオでは、過度な暴力や残虐な描写が含まれないように制限されています。
3. ヘイトスピーチや差別的表現の制限
AIは、人種、性別、宗教などに関する差別的な表現やヘイトスピーチを含まないように設計されています。 全ての観客にとって安全で尊重される内容が提供されます。
4. 怒りや過度のネガティブな感情の制限
AIは、怒りや極端にネガティブな感情を表現するシナリオを避けるように制御されています。
これにより、観客が安心して楽しめるコンテンツが生成されます。
5. 文化的・社会的タブーの尊重
シナリオ生成においては、文化的や社会的なタブーに対する配慮も重要です。
特定の文化や社会において不適切とされるテーマや表現は避けられます。
その他にも、言葉遣いについては丁寧で礼儀正しい言葉遣いが用いられ、誰かを傷つける表現は避けられるなど、基本的には上記のような原則が適用されることが一般的と考えられます。
【其の二】シナリオ生成のオーダー(プロンプト)の投げ方にひと工夫必要だった!?
効果的な生成を得られるプロンプト(指示)の工夫や、活用シーンを考える必要もありそうです。
ChatGPTへ直接、落語のシナリオ生成においての手続きをどう踏むのが効果的かを聞いみましたので、以下にまとめます
(回答内容)
【ステップ1】: コンセプトの設定テーマの決定
現代社会の問題、日常生活のユーモア、歴史的なエピソードなど、幅広いテーマから選ぶ。
【ステップ2】: 登場人物と設定の考案
主な登場人物とその特徴、物語の舞台設定を考える。
【ステップ3】: プロットの作成
物語の始まり、中盤、結末(オチ)を大まかに構築。
【ステップ4】: シナリオの詳細化
各シーンの詳細を詰める。ここで、各登場人物の台詞や行動、場面転換のタイミングなどを考える。
【ステップ5】: AIのサポートを活用
物語の具体的なシナリオを作成する段階で、AIを活用する。
例えば以下のような方法:
・アイデアのブレインストーミング:シーンや台詞のアイデアを出してもらう。
・台詞のリフレーズ:登場人物の台詞をより自然で面白いものに改変する。
・ユーモアの追加:物語の中で笑いを取るポイントを提案してもらう。
【ステップ6】: 演出の考案
シナリオが完成したら、演出方法を考える。表情や動き、小道具の使い方など、落語ならではの演出要素を具体化する。
(回答ここまで)
なんと、今回の回答内ではAIの活用が登場するのが【ステップ5】なのです…!!
仮に【ステップ1】からAIを活用する場合、前述したフィルタリングが生成物に与える影響も加味しなければなりませんよね。
一方で、AIだからこそ慣習や伝統に縛られない、新しい演出方法や発想が得られる可能性もあります。
子ども向け落語やAI生成落語を即興披露するなど、AIの特性をうまく生かせるようなコンテンツが見いだせれば、現状のままでも面白そうです。
おわりに
今回は、落語を一例としたAI生成の現状でした!
「笑い」を含む感情表現において、アルゴリズムのデータの積み上げは、AI生成分野にとって今後の課題ではないでしょうか?
「笑い」と一口に言っても、受け取り手の感性によっても得られる結果が異なる分野です。
表現の難しさ、繊細さ、また人間の生み出した無形文化財の尊さというものを考えさせられるテーマですね。
ここまでお目通しいただき、ありがとうございます
また次回の更新で。